日本で最大の塑像を祀り最初の厄除け霊場「第七番札所 東光山 龍蓋寺」

●宗派:真言宗豊山派
●御本尊:如意輪眼観世音菩薩
●開基:義淵僧正
●創建:天智天皇2年(663年)

《概要》
正式名の龍蓋寺より地名からつけられた通称の岡寺で知られるこの古刹は、日本における法相宗の祖ともいわれる義淵(ぎえん)僧正が草壁皇子の亡き後、皇子の住まいであった岡宮をもらい受け、寺に改めたのが始まりとされています。

義淵僧正は良弁(りょうべん)、行基(ぎょうぎ)など多くの名僧の師であり、竜門寺、道明寺などの寺も建立し、また宝力にも優れていました。

その義淵の出自や皇子との関係は、「東大要録」に記されており、その内容については以下の通りです。

“大和国高市郡の子宝に恵まれない夫婦が観音に祈願していると、夜中に赤ん坊の泣き声が聞こえたため、外に出てみると柴垣の上に白布にくるまれた赤子がおり、家に連れて帰ると香気が満ちたそうで、その霊異を聞いた天智天皇は、のちに義淵となるこの子を引き取り、孫の草壁皇子と共に岡宮で育てた”そうです。

さらに寺龍蓋寺の名はこの地を荒らし農民を苦しめていた龍を義淵僧正が池に封じ込め、大石で蓋をしたという伝説によります。

尚、寺は岡山の中腹にあり、石鳥居から急坂の参道を500mほど登っていくと境内に出ますが、そこには3000株ものシャクナゲがあり、4月中旬~5月上旬にかけては花を目当てに多くの観光客が訪れます。

桃山時代に建てられた三間一戸、入母屋造本瓦葺きの楼門で朱の鮮やかな仁王門【重要文化財】をくぐって石段を上ると、文化2年(1805年)に再建され、正面には唐破風を取り付けた境内でひときわ大きな建物である本堂が建っています。

本尊の巨大な如意輪観音座像【重要文化財】は像高4.6mにもおよぶ日本最大の塑像(そぞう)で、日本三大仏にも数えられます。

弘法大師がインド・中国・日本の土を集めて造り、それまで本尊とされてきた金銅如意輪観音観世音菩薩半跏思惟像【重要文化財・現在は京都国立博物館に寄託】を胎内に納められて本尊とされたといわれています。

古来より、「やくよけの観音様」として人々の信仰が厚く、鎌倉時代の「水鏡」にも、二月初午の日には必ず岡寺に参詣したと記録されています。

本堂の前には義淵僧正が龍を封じ込めたとされる「龍蓋池」があります。

《参詣ガイド》
古代史の舞台で知られる飛鳥の東方山腹に立っており、車の場合であれば寺近くの民営駐車場を利用すれば山門まで徒歩5分も掛かりませんが、山麓の岡集落にある岡寺前バス停からだと、石鳥居をくぐって急坂の参道を10分ほど登らねばなりませんがもっとも、昔ながらのこのアプローチの方が、西国札所に参る風情があります。

かつて参詣者の宿場町としても賑わった岡集落には古い民家が残り、石畳が敷かれた参道途中には古風な茶屋も営業されています。

さらに坂道をゆくと、緑を背にした仁王門が見え、堂塔は山の斜面に不規則に配置されており、門をくぐり石段を上がると、書院、開山堂、本堂が東西に並んでいます。