多くの伽藍が立ち並んだ不死鳥の寺「第十四番札所 長等山 三井寺」

●宗派:天台寺門宗(総本山)
●御本尊:如意輪観世音菩薩
●開基:大友与多王
●創建:朱鳥元年(686年)

《概要》
三井寺は正式には園城寺といい、天台寺門宗の総本山で、飛鳥時代・天武天皇15年(686年)に壬申の乱に敗れた大友王子の皇子の大友与多王(よたのおおきみ)が父の霊を弔うために寺を創建し、天武天皇から「園城」という勅願を賜ったことが園城寺の始まりと伝わっています。

貞観年間(859~877年)になって、密唐から帰朝して密教の真髄を伝えた智証大師円珍(ちしょうだいしえんちん)が園城寺を天台別院として中興し、三井寺は東大寺・興福寺・延暦寺とともに本朝四箇大寺の一つに数えられるほどの隆盛を極めました。

境内には天智・天武・持統天皇の三帝の産湯に用いられた霊泉があったことから「御井の寺」と呼ばれ、この霊泉を円珍が三部潅頂(さんぶかんじょう)の法儀に用いたことから三井寺と呼ばれるようになったといわれています。

比叡山延暦寺との長期にわたる紛争や、再三の兵火にあい、幾度も諸堂を焼失しましたが、その度に復興を遂げました。

広大な境内には北政所(きたのまんどころ)によって再建された国宝の金堂をはじめ、霊泉の湧く閼伽井屋(あかいや)【重要文化財】、室町時代に造られた三重塔(重要文化財)、近江八景の「三井の晩鐘」で有名な鐘楼【重要文化財】などが立ち並び、国宝・重要文化財など100余点にも及ぶ貴重な寺宝が数多く残っています。

札所の観音堂は、石段を上った境内南の高台にあり、堂は元禄2年(1689年)の再建で、本尊の如意輪観世音菩薩【重要文化財】は三十三年毎に開扉される秘仏です。

前の広場からさらに石段を上ると眺望台があり、琵琶湖や比良山系の景色を楽しむことが出来ます。

《参詣ガイド》
京阪三井寺駅を降りると、西方の山の斜面に銀色の甍が点在しているのが見えますが、それが三井寺の堂宇や塔頭で、札所の観音堂は境内のほぼ南端に位置しています。

まず観音堂を拝観するか、金堂などから先に廻るかによって道順が異なりますが、さきに観音堂へお参りするなら、山に向かって琵琶湖疎水沿いにまっすぐ行き、左へ大きく道なりにカーブすると右手(長等神社手前)に観音堂への階段入り口があります。

逆に金堂などの諸堂を先にするのであれば正門である仁王門を目指しますが、疎水沿いの道の最初の信号が「北国橋」で、その橋を右に渡って直進、次の交差点を左折すると300mほど先に仁王門が見えてきます。

仁王門の右方に食堂(じきどう)、正面に金堂、金堂の左手前に鐘楼、裏手に閼伽井屋、裏手から少し離れて霊鐘堂《慶の引摺鐘(ひきづりがね)》、さらに一切経蔵(いっさいきょうぞう)、唐院などが立ち、静謐な佇まいとなっています。

唐院から順路に従って村雲橋を渡り、道なりに南へ進み、妙堂《湖国十一面観音第一札所》を過ぎ、毘沙門堂まで来ると、札所の観音堂へと至る階段があります。