千の手と千の眼の観音様が人々を魅了する「第五番札所 紫雲山 葛井寺」

●宗派:真言宗御室派
●御本尊:十一面千手千眼観世音菩薩
●開基:行基
●創建:神亀2年(725年)

《概要》
創建の詳しい年代などは不明ですが、寺伝によると7世紀中頃、河内(かわち)地方に古来より勢力を持っていた百済(くだら)王族の子孫・葛井氏が白鳳時代に氏寺として創建したのがはじまりといわれています。

奈良時代になって聖武天皇の勅願によって金堂、講堂、東西両塔の聳える薬師寺式配置の大伽藍が整備されました。

神亀2年(725年)には春日仏師の稽文会(けいもんえ)、稽首勲(けいしゅくん)親子によって十一面千手観音像が造立、そして行基を導師に迎えて盛大な開眼供養が行われ、その席には聖武天皇も臨席し、その夜は葛井広成の屋敷に宿泊されたと伝わっています。

応仁の乱後も続いた畠山氏の内紛に巻き込まれ、明応2年(1493年)には本堂や宝塔を残して焼失し、さらには永正7年には地震に遭い、本堂以外の伽藍を失いましたが、その都度多くの信者による尽力によって再興されました。

豊臣家や徳川家からの庇護も受けており、特に豊臣秀頼が寄進した四脚門(西門)は、桃山様式を良く伝える建造物として、国の重要文化財に指定されています。

このお寺は商店や住宅に囲まれた町中にあり、地元の人たちが気楽に立ち寄る憩いの場といった雰囲気があります。

紫雲山(しうんざん)の扁額が掲げられた南大門をくぐると石畳がのびており、正面に入母屋造りの本堂が建っています。

本尊に祀られている十一面千手千眼観世音菩薩坐像は奈良の唐招提寺(とうしょうだいじ)の千手観音立像と並び称される乾漆像の傑作といわれており、大阪府下で唯一の天平仏での国宝となっています。

合掌する2本の手のほかに、中の手40本、小の手1000本を持ち、その手には眼が描かれ、衆生のいかなる苦難も救ってくださるとの信仰を集めておられ、秘仏ながらも毎月18日に御開扉され、間近で拝観することが可能となっています。

本尊の右に建つ聖観音菩薩立像、左に建つ地蔵菩薩立像は、共に現存する平安時代の貴重な仏像になります。

また本堂右手には松葉を持つと力が付くといわれる楠木正成(くすのきまさしげ)ゆかりの「腰掛けの松」が繁っており、さらに境内には藤棚もあり、開花時は見事な眺めで、藤祭りも開催されています。

《参詣ガイド》
大阪阿部野橋駅から近鉄南大阪線準急で10分余りの藤井寺駅にて下車後、改札を出てすぐ右手に寺の案内板が出ています。

駅を出たら線路沿いに東に向かうと、数分でアーケード商店街の藤井寺一番街があり、ここを抜けると左手に寺の西門となる朱雀の四脚門が見えてきます。

もちろんここからも境内に入ることは出来ますが、いったん通り過ぎて、正門でもある南大門から入るのがおすすめで、この南大門は重層の楼門で、楼上には「紫雲山」の扁額が掛かっています。

車で訪れる場合は、西名阪道 藤井寺ICから堺・大和高田線を西へ向かい、小山交差点で左折すると、大きな駐車場が、南大門近くに整備されています。