早咲桜で知られ和歌の浦の絶景を望む「第二番札所 紀三井山 金剛宝寺」

●宗派:救世観音宗(総本山)
●御本尊:十一面観世音菩薩
●開基:為光上人
●創建:宝亀元年(770年)

《概要》
正式名称は金剛宝寺といって、護国院と称するこのお寺の創建については、次のような伝承が伝わっています。

今から1230年前に唐の僧・為光上人が日本各地を行脚している途中の夜半に、名草山(なぐさやま)山頂から発せられている光を見て、その翌日に山に登ると金色の千手観音様と出会いました。

為光上人はこの地が霊場と悟り、十一面観音像を刻んで、草庵に安置したのが寺の始まりといわれているそうです。

また為光上人が大般若教600巻を書写して境内に埋納した際、龍女が現れて、毎年7月9日に献灯を約束し、竜宮に招いた上人に7種の宝物を奉ったとも伝えています。

ちなみに紀三井寺という名前は山内に湧く、三つの霊泉《清浄水(しょうじょうすい)・楊柳水(ようりゅうすい)・吉祥水(きっしょうすい)》があることからその名前で呼ばれているとされていますが、あたりの地名「毛見」にある寺から転じたともいわれています。

紀三井寺の参道の石段を上ると最初に清浄水があり、さらに少し上ったところに楊柳水、さらに裏門から車道を200mほど西に行ったところに吉祥水が湧き出ています。また境内には約1,200本の桜の木が植えられており、これらの桜は早咲きの桜で有名です。

さらに本堂へは、桃山時代の様式を残している楼門【重要文化財】から331段の石段を上りますが、この石段は紀伊国屋文左衛門(きのくにやぶんざえもん)の結婚と豪商になるきっかけとなったことにちなんで、「結縁坂(けちえんざか)」と呼ばれており、この石段を上りきって境内に立つと、片男波(かたおなみ)の海岸や和歌の浦をはじめ、淡路島や四国の遠景が望めます。

そして境内の右手にある新仏殿には、木造の立像としては、日本最大の大千手十一面観音菩薩を安置しています。

また室町時代に建立された多宝堂と安土桃山時代に建立された鐘楼はともに国の重要文化財に指定されています。

あと、千鳥破風(ちどりはふ)の屋根を持つ総ケヤキの入母屋造りの本堂は、宝暦9年(1759年)の再建となり、本尊は本堂裏手にある大光明殿に安置され、50年に一度開扉されています。

《参詣ガイド》
和歌浦湾を西に見る標高229mの名草山の山嶺に伽藍を構え、和歌浦からもその堂塔を望むことが出来ます。

また関西屈指の早咲きの桜で知られ、早春にはこのお寺の名前を聞くことが増え、さらに盛りには全山が見事な桜の海と化して夜桜見物にたくさんの人が訪れます。

尚、最寄りの駅は、JR紀勢本線の紀三井寺駅ですが、南海本線和歌山市駅からの和歌山バスも、所要25分ほどで参道西方の国道42号で停車します。

ちなみに、JRの駅からは少し南に歩き、左に折れてみやげ物店が並ぶ参道に入って、駅から歩くこと10分ほどで参道突き当りにどっしりと聳える楼門に着きます。

さらに本堂のある台地まではここから、231段の直線上の石段を登っていくのですが、途中右手には清浄水と称する小滝が流れ落ちています。

その後数ヶ所の塔頭が立つ石段を登り切って、左に進んでいくと本堂があり、その眼下には片男波の砂州が長く伸びる和歌浦湾を一望することが出来ます。